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心のケアが必要な人達は誰か 自殺者の統計をみますと、年間3万人の自殺者のうち、小中学生の自殺は百人未満の2桁です。20歳未満に広げても、自殺は増加傾向になく、年間600人程度。全体の2%程度です。 自殺者全体に占める割合は年代が上がるほど増えていきます。40代と50代だけで全体の40%弱を占め、60歳以上だと約35%です。50歳以上で、過半数を占めているのです。 これを見れば、むしろ「子どもより大人のほうが心が壊れやすい」と考えるべきでしょう。事実、年齢を重ねるほど、脳そのものの予備力が悪くなり、さらに気力や体力が衰えます。純粋に生物学的な次元で、年齢を重ねるほどうつ病になりやすいのです。そこに、大人の複雑な人間関係、責任、役割が重くのしかかるのです。 年を重ねるほど、こころのケアはより必要になるのです。 わたしはお子さんを診る機会が、一般的な心療内科医・精神科医よりはるかに多いです。 お子さんの場合、環境を変え、お薬を飲んでもらうことで、ほとんどが良い方向に向かいます。子どもは、良くも悪くも変化する力があるのです。 大人は、背負っているものが子どもと比べ物になりません。そして、サポートする人が非常に限られてきます。配偶者にさえ頼れない人は少なくありません。 誰にも相談できず、精神的に追いつめられ苦しんでいる人は、中高年にこそ多いのです。 社会全体が、もっと中高年の人の繊細さ・心のケアの必要さ に気付いてほしい。 毎日患者さんと向きあうたびにそう思います。 もしあなたの身近に辛さを抱えている人がいたら、専門家に相談することを勧めてあげてください。その人は、傍から見るよりもはるかに苦しみ悩み、思い詰めているかもしれません。 あなたの一言が、その人を救うことになるでしょう。 |